使い魔「ボベービャン!ボベービャン!!」
やちよ「はぁっ!」ザンッ
使い魔「ボベー…ミャン…」シュウゥ
あきら「相変わらず凄いなぁ、あの人は」プルン
さやか「なんていうかぁ、我が心、明鏡止水…って感じにクールでカッコイイよね!」プルンッ
麻友(しゃんとしてるって、ああいう感じのことを言うのかな?)ポヨン
明日香「くうぅ、彼女の剣技を見る度に、我が未熟さを思い知らされます」ブルン
夏希「嘆かないで、新たな進化への道はもう開かれてるよ!ゴー!ファイン!ウィン!」ブルブルン
レナ「ふん、レナだって経験さえつめばあれくらいできるようになるんだから)パンパン
レナ(…すごっ)パンパン
やちよ「……」
調整屋
やちよ「納得がいかないわ」
みたま「なにがぁ?」ユサッ
やちよ「実装から一年余…数多くの魔法少女が実装されてきたわ」
やちよ「当然、私と同じ水属性の子もたくさんいる」
やちよ「なのに、なぜ私だけが絶壁なのよ」
やちよ「…胸が全てじゃないのはわかってる。でも、ああも揺れてるのを近くで見せ付けられるとどうしても比べてしまうのよ」
やちよ「ねえ、知ってる?神浜において貧乳と呼ばれる魔法少女はだいたい中学生の子ばかり。まだ将来性もあるのよ」
やちよ「でも、私は違う…もう未成年じゃいられない。成長期は、とっくに終わってるのよ」
みたま「えー?でもぉ、今度のクリスマス用に撮った写真だといろはちゃんたちくらいはあるじゃない」ユッサユッサ
やちよ「…ット」
みたま「え?」ブルンッ
やちよ「パット…なのよ。制服に影があるように見えるのもブラで…」
みたま「あ~、それは…ごめんなさぁい」ボイン
やちよ「というかさっきから揺らしすぎなのよ!どれだけ見せ付けてくるのよ!!」ムンズ
みたま「いやぁん、激しいわ~」
やちよ「はぁ、はぁ…み、水属性にも巨乳じゃない子はいるわ。桑水さんとか」
やちよ「でも、彼女は彼女で、寄せてあげるようなものは使っていないように見えるし、やっぱりそこそこだし」
やちよ「純さんや常盤さんに静海さんは普通に美乳だし…というか、みんな普通に谷間とか作れるくらいはあるのよ(※水着いろははノーカウント)」
やちよ「でも私だけは絶壁…クライマーが登っていても補助することはできない…」
やちよ「水属性だけじゃない。みかづき荘でもそう」
やちよ「フェリシアは勿論、鶴乃も双葉さんもある。いろはも、貧乳扱いされない程度にはある」
やちよ「どうして私だけなのかしら。どうして…」
みたま「もう、しょうがないわねえ。そんなに悩むなら、うってつけの場所を紹介してあげるわ」
やちよ「言っておくけど、豊胸手術ならやらないわよ」
みたま「そんなのじゃないわよ。ただ、私の知り合いが『持たざるもの』のメンタルケアが得意ってだけ」
やちよ「べ、別に傷心なわけじゃ…」
みたま「多少なりともストレスを感じているのは事実でしょう?」
やちよ「……」
みたま「騙されたと思って、一度行ってみてちょうだい。話は私がつけておくから。あっ、ここ住所ねぇ」ピッ
やちよ「…ありがとう」
数日後
やちよ「えーっと、見滝原市、3丁目の丘の上の…あのテントかしら」
『相談所 焔』
やちよ(そこそこ大きいけれど、いかにもさっき建てましたって感じのテントね。かなり胡散臭いわ)
やちよ「まあでも、冗談でもなんでも、せっかくセッティングしてもらったんだから、足は運ぶべきよね」
パラリ
やちよ「ごめんください」
黒羽根「待っていたわ。調整屋の紹介で来た七海やちよね」
やちよ「!?」
やちよ「く、黒羽根…ということは、ここはまさかウワサの…!?」
黒羽根「ウワサ?黒羽根?」
やちよ「え?あなた、黒羽根でしょう?」
黒羽根「あ…ごめんなさい。私、あまり顔を見せたくないタチだから、友達からこれを借りたの」
やちよ「そ、そう…なら、マギウスとも関係ないのね?」
黒羽根「マギウス…ごめんなさい、なんのことだかさっぱり」
やちよ(怪しい…けれど、嘘をついているようには思えない)
やちよ(とにかく、いまは目的を果たすとしましょうか)
やちよ「変なことを言ってごめんなさい。それで、その…」
黒羽根「言っておくけど、悩みが解決するかどうかはあなた次第よ。私ができるのは、調査の結果を伝えることだけ」
やちよ「調査?」
黒羽根「ええ。なぜ魔法少女は『持たざるもの』になるのか…その調査の結果よ」
やちよ「『持たざるもの』になる…それに理由があると?」
黒羽根「信じられないでしょうけどね。ただ、虚構とするにはあまりにも合点が行き過ぎるの」
やちよ(原因があるなら…このコンプレックスも解消できるかもしれない)
黒羽根「では、話を始めてもいいかしら」
やちよ「ええ」
黒羽根「まずは研究のサンプルを見てもらうわ」つ写真
やちよ「見滝原の制服…中学生のようね」
やちよ(顔にモザイクがかけてあるのはプライバシーに配慮してかしら)
黒羽根「ええ。この陰険ヘタレ眼鏡は中学二年生。見てのとおり、巨乳ではないけれど、影ができる程度には胸があるわ」
やちよ(このモザイクの上からかけてある眼鏡、どこかで見たような…)
黒羽根「で、その数年後の彼女がコレよ」つ写真
やちよ「眼鏡がとれた…って、え?」
黒羽根「気がついたかしら」
やちよ「胸が…ほとんど無くなってる」
やちよ「おかしいわ。胸が脂肪に変わるのはわかる。でも、体形はほとんど変わらず胸だけが萎んでいる」
やちよ「成長が止まることはあってもマイナスに変わるはずがないわ!」
黒羽根「その通りよ。けれど、この現象は既にあなたにも起きているかもしれない」
やちよ「えっ」
黒羽根「私はあなたの過去の詳細は知らないから断言はできない…けれど、このサンプルの眼鏡とあなたには共通点がある」
やちよ「共通点?」
黒羽根「長年、魔法少女として前線で戦っていることよ」
黒羽根「聞いたところによると、あなたは7年ほど魔法少女をやっているそうね」
やちよ「ええ、まあ」
黒羽根「実は、この眼鏡も7年以上魔法少女をやっているようなものなの」
やちよ「え?でも、制服は…」
黒羽根「とある魔法の影響で、肉体的には変わらず、精神だけは経験を積むようになってるのよ。詳しくは話せないけれど」
黒羽根「そのことはおいておいて、何故年数と乳が関係するのか…関連性は至ってシンプル」
黒羽根「魔法少女にデカイ胸なんて邪魔なだけだと理解するからよ」
やちよ「!?」
黒羽根「この動画を見て」
やちよ(また顔にモザイクがかかってるわね。でも、このフリフリとした桃色の衣装、どこかで見た覚えが…)
黒羽根「この可愛い子に車輪が迫ってきているわね。でも…」
やちよ「あっ、車輪を寸でのところでかわしたわ」
黒羽根「もしも彼女の胸に少しでも膨らみがあれば、間違いなく削ぎ落とされていたわ。このように、巨乳が邪魔になるケースは戦闘において珍しくない」
やちよ「邪魔だから小さくなった…でも、私は特に意識したことはないけれど」
黒羽根「無視意識下に排除してしまうのよ。はじめは小さな、自分でも気づくことすらできない欠片程度の厄介さにしても、積み重なれば身体に影響を齎すのよ」
黒羽根「このスキマに入りたいのに胸が邪魔とか、地面につぶされると邪魔とか、胸が揺れて服が伸びるとか、ブラが外れそうになって集中できないとか」
黒羽根「言い換えれば、度重なる実戦で苦労をしている魔法少女ほど胸が小さくなっていくということね」
やちよ「ちょっと待って。直接的な戦闘から身を引いているみたまやみふゆはともかく、十七夜は普通にあるわ」
黒羽根「それは精神的なものもあるわね。彼女は戦い以外にも拠り所があった。調整屋からは、いい上司と職場仲間に恵まれたと聞いているわ」
黒羽根「でも、あなたや眼鏡は違う。周囲を頼ることもできず、かといって私生活を堪能しているわけもなく…結局、戦いだけが生きる意味になっていたのよ」
やちよ「……」
やちよ(モデルの仕事は嫌いじゃないし、不満だってあるわけじゃない。けれど、十七夜ほど仕事に熱中しているわけでもない)
やちよ(でも、いろはと出会う前は、誰かを死なせるのが恐くて独りで戦っていた…ウワサを調べ、戦うことを目的としていた節もあったかもしれない)
やちよ(だとすれば、私の胸は、貧しい訳ではなく、なるべくしてなるようになっただけのこと?)
やちよ(つまり、魔法少女はいずれはこうなる可能性があるというだけ…そう考えれば、悪いことばかりじゃないかもしれない)
やちよ「…あの、つかぬことを聞くけれど、なぜこんな調査を?」
黒羽根「…簡単なことよ。それは…」グイッ
やちよ「!」
黒羽根「私も『持たざる者』だからよ」
やちよ(そんな…下着が見えるほど服をまくっているのに…私以上に凹凸が無さ過ぎる…まるで画用紙のように平坦でペラペラ…!!)
やちよ「…年齢は?」
黒羽根「26歳」
やちよ(同士…いや、それ以上…まさに師…!)
黒羽根「…どうやら、少しは肩の荷が降りたようね」
やちよ「…ええ。少し、気が軽くなったわ」
黒羽根「ならもう行きなさい。胸を張って…ね」
やちよ「ええ。胸を張って…ね。世話になったわね。これ、お礼といってはなんだけど」
『万々歳優待券』
黒羽根「…たしかここ、50点で噂の…」
やちよ「確かに50点だけど、意外と通いたくなるのよ?」
黒羽根「…気が向いたら行ってみるわ。ありがとう」
黒羽根「もしもまた胸のことで悩むようなら来なさい。愚痴くらいは付き合ってあげるから」
やちよ「また来るわ。今度は、相談相手じゃなくて、友達として」
黒羽根「……」
プルルル ピッ
黒羽根「終わったわよ」
みたま『お疲れ様。やちよさんはどうだったかしら」
黒羽根「だいぶ自信がついたみたいね」
みたま『そっ、よかったわぁ。…それで、あなたはどうなの?』
黒羽根「?」
みたま『似た者同士、なにか通じるところがあったんじゃないかしら?』
黒羽根「…さあ」
みたま『もう、イジっぱりなんだからぁ。そんなことじゃ、いつか参戦した時に浮いちゃうわよぉ?』
黒羽根「…もう切るわよ。報酬はいつもの手筈でお願い」
みたま『はいはい』
ピッ
黒羽根「……」
バサッ
悪魔ほむら(まどマギ界において、幼児体型以外の貧乳キャラはもはや数少ない…)
悪魔ほむら(七海やちよ…魔法少女の魅力において、胸なんて要素のひとつでしかないことを見せ付けてやりなさい。あなたこそが、『持たざる者』の希望よ)
翌日
使い魔「ボベービャン!ボベービャン!!」
やちよ「アブソリュートレイン!」カッ
使い魔「ボベー…ミャン…」シュウゥ
ももこ「おっ、調整屋からはどこか上の空になってるって聞いてたけど、今日はだいぶ調子がイイみたいだね」ブルンッ
フェリシア「ん?やちよのやつ調子が悪かったのか?だから最近の晩飯が同じヤツばっかだったのかよ」プルンッ
レナ「あんた気がついてなかったわけ?7年も魔法少女やってた人があんな程度だった筈がないでしょ?(あんなにも派手な必殺技…すごっ!)」パンパン
かえで「レナちゃんだってやちよさんが悩んでたことすら知らなかったくせに…」
レナ「はぁ?あんただって知らなかったくせに」パンパン
かえで「やちよさんは胸のことで悩んでたんだよ。そんなことも知らないの?」
レナ「む、胸ぇ?こんなもので悩むとかどうかしてるんじゃないの?」パンパン
かえで「レナちゃん…今の発言は発展途上の魔法少女全員を敵にまわすことになるよぉ」
ももこ「コラコラ。なんでやちよさんが元気になった途端にあんたたちが火花散らしてるのさ」ユサッ
フェリシア「調子が戻ったならなんでもいいやいいや。やちよー!たまには鍋以外のもの食おうぜー!!」プルプルンッ
やちよ「……」チラッ
フェリシア「どうした?」プルンッ
やちよ「」フッ
フェリシア「お?なんかイイことあったか?」
やちよ「いいえ、別に。…さっ、今日のご飯は焼肉にしましょうか」
フェリシア「マジで!?うひょー、食いまくるぜぇ!」
やちよ(小さくなった胸は苦労の証、ね。考え方が変わればいまは大きい胸も可愛く思えるわ)
やちよ(私達が苦労しているぶん、他の子たちの苦労が減って胸も大きくしていられる…そう考えれば、私の胸も立派な勲章ね)フフッ
ももこ「どうやら完全に吹っ切れたようだね。いやーよかったよかった」
レナ「そもそもいつもレナの胸を弄ってくるのはあんたでしょ」パンパン
かえで「弄るのは羨望の裏返しなんだよ。そんなこともわからないの?」
ももこ「だから、なんであんたらが争ってんのさ。…ほら、やちよさんを見てみなよ」
レナ「あっ、凄い穏やかな表情をしてる…あの人、あんな顔できるんだ(…綺麗)」パンパン
かえで「……」
かえで「でも…」
ももこ「?」
かえで「今まで胸を気にしてた貧乳キャラが気にしなくなったらもうなんの魅力もないよね」
やちよ「」
『相談所 焔』
黒羽根(悪魔ほむら)「戻ってくるの早かったわね」
やちよ「何にも知らないから!何にも知らないからああ言えるのよ!」ダンッ
黒羽根(悪魔ほむら)「今夜は飲み明かしましょう。吐き出し終わるまでは付き合ってあげるから」
黒羽根(悪魔ほむら)(彼女の悩みを共有できる真性の貧乳魔法少女が現れる日はいつか来るのかしらね)
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あやか「ハッ!」
雫「どうしたの?」
あやか「なんだか美味しいネタに乗り損ねたような気分!」
雫「あやかって、時々ギャグにもなってない不思議なことを言うよね」
終わり
終わりです。
胸には適材適所があると思います。
引用元: http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1544019394/