※百合注意
バレンタイン一週間前
マミ「え?」
ほむら「まどかは美樹さやかとくっつくべきだと思うのよ」
マミ「えっと、ごめんなさい。くっつくべきっていうのは、お付き合いするという意味でいいのかしら?」
ほむら「ええ」
マミ「…とりあえず理由を聞かせてくれる?」
ほむら「まどかと美樹さやかはとても仲が良いのは知ってるわね?」
マミ「ええ。あの二人は一緒に行動するのが基本ね」
ほむら「そして、まどかの行動原理は美樹さやかが中心となっている…ここまではいいかしら」
マミ「言われてみればそうかもしれないわね。…それで?」
ほむら「そして、美樹さやかもよくまどかは私の嫁だと宣言しているし、まどかも満更でもない…これは付き合うしかないわよね」
マミ「飛躍しすぎでしょ。あれは美樹さんの冗談でしょうに」
ほむら「その冗談が本当の恋になったら、とても素敵なことだと思わない?」
マミ「どれだけあの二人をくっつけたいのよ」
ほむら「…あの二人が共にいることは、私にとっても救いなのよ」
ほむら「私はまどかを救う為に契約した。そして幾度も敗北し、その度にまどかを死なせてきてしまった。だから、いままどかが契約せずにいてくれているこの時間がとても愛おしいの」
ほむら「贅沢は言わないの。ただ、あの子が平和に生きていてくれればそれでいい」
ほむら「そして、まどかの平和に不可欠なのは美樹さやか。彼女が生きていることこそが、まどかの平和を象徴しているのよ」
マミ「…それって、美樹さんじゃなくても当てはまらないの?」
ほむら「違うのよ。まどかにとって美樹さやかは、大切な親友で、幼馴染で、憧れで、誰よりも愛を注げる何者にも代え難い存在なの」
ほむら「私達は魔法少女だから、危険に巻き込むわけにはいかないとか、いつ死ぬかもしれないとか、色々なことを考えて彼女から一線を引いてしまう。そのことで、まどかもどこか負い目を感じてしまう」
ほむら「けれど、まだ契約していない美樹さやかなら、まどかと同じ立場で考え行動してくれる」
ほむら「まどかと美樹さやかの平和な生活を見ているだけで、これまでの戦いは無駄じゃなかったと思えるの」
ほむら「あの子達の日常を想像するだけでホラ…」ポワポワ
マミ「…あなたの言いたいことはなんとなくわかったわ。けれど、それは本人たちの意思じゃないと成り立たないんじゃなくて?」
ほむら「そんなことは分かってるわ。だから、今度のバレンタインの日に賭けるのよ」
マミ「なるほど、わざわざ私のところに一人で来たのはそういうことなのね」
ほむら「ええ。あの二人をイイ雰囲気にするために協力して欲しい」
マミ「…わかったわ。可愛い後輩の為だもの。協力させてもらうわ」
ほむら「ありがとう」
マミ「それで、なにをすればいいの?」
ほむら「これといって準備してもらうことはないわ。バレンタインのチョコパーティの時に、タイミングを見計らってさり気なく席を外して欲しい。私も佐倉杏子を連れてそれに便乗するわ」
マミ「あくまでも二人の意思と流れに任せるということね」
ほむら「勿論、それで駄目なら私から動くのは諦めるわ」
マミ「佐倉さんには伝えてあるの?」
ほむら「いいえ。彼女に知られると、いつ美樹さやかにまで知られるかわかったものじゃないから」
マミ「そう。…なら、これは私と暁美さんの二人きりの秘密ということね」フフッ
ほむら「そういうわけでお願いするわ。…ケーキ、ご馳走様」
マミ(ふふっ、まさか暁美さんにこんなことを相談されるなんて夢にも思っていなかったわ)
マミ(…暁美さんの言うとおり、鹿目さんと美樹さんの日常は、魔法少女ではない私達にはもう掴めないもの)
マミ(大好きな人たちが平和に生きてくれたならこれ以上嬉しいことはないわよね)
マミ「さて、失敗しないように当日の流れをシュミレーションしましょうか」
ピロン
マミ(あら?鹿目さんからメールだわ。『少し相談があるんですけど大丈夫ですか?』…?)
まどか「突然すみません」
マミ「いいえ、今日はオフだから大丈夫よ。それでどうしたのかしら?」
まどか「はい。ほむらちゃんのことなんですけど」
マミ「暁美さん?」
まどか「ほむらちゃんと杏子ちゃんをくっつけたいんです」
マミ「え?」
まどか「あっ、ごめんなさい。急に言われても困りますよね」
マミ「そっ、そうね。あまりに急だからなんと反応していいものやら…理由、聞かせてくれる?」
まどか「…ほむらちゃんは、とても優しいんです」
まどか「いつだって、わたしやさやかちゃんを守ってくれて、あまり口には出さないけどみんなにも気を配ってくれて」
まどか「でも、とても不器用で繊細な子なんです」
まどか「なんだって自分で抱え込もうとして、自分の中に溜め込んで、それで苦しんでいても誰にも頼ろうとしてくれなくて…」
まどか「わたしだって力になりたいと思ってるんです。でも、わたしは魔法少女じゃないから、ほむらちゃんも遠慮しちゃう部分があって、わたしも気が引けちゃう部分があって…」
マミ「そうよね。誰が悪いとかじゃなくて、どうしようもできない部分ではあるわね」
まどか「でも、杏子ちゃんなら誰よりも力になれるんです。同じ魔法少女の杏子ちゃんなら、ほむらちゃんと対等に接してくれるんです」
まどか「実際、ほむらちゃんは杏子ちゃんを一番信用しているように見えます。私達には見せない顔をよく見せてるんです」
まどか「杏子ちゃんも杏子ちゃんで、本当に対等に接せる人がいるのを喜んでいる…無意識下のうちに、二人は惹かれ合っている筈なんです」
マミ「…あなたが佐倉さんと暁美さんをくっつけたいのはわかったわ。けれど私への相談っていうのは」
まどか「バレンタインの日をキッカケに二人をくっつけたいんです」
マミ(またバレンタイン…)
まどか「勿論、私が無理やりくっつけようとしても二人は嫌がるし、むしろそれで関係が悪化しちゃうかもしれない。だから、あくまでも本人達の意思を尊重したいんです」
マミ「流れに任せる、と」
まどか「はい。それで駄目ならあとは時の流れに任せるしかありません。…それで、マミさんに協力してほしいんですけど…いいですか?」
マミ(うーん…まさか暁美さんと相談が被るなんて…けど、先約がいるから断りますなんてできないし…)
マミ(…まあ、暁美さんは鹿目さんと美樹さんを、鹿目さんは暁美さんと佐倉さんをくっつけたいんだから、拗れることはないわよね)
マミ「OK、わかったわ。可愛い後輩の悩みだもの。私も一枚かませてもらうわ」
まどか「ありがとうございます!」パアッ
マミ「それで、具体的にはどうするの?」
まどか「チョコパーティの時に、タイミングを見計らって席を外してください。わたしもさやかちゃんを連れて一緒に出て行きます」
マミ「えっ」
マミ「そ、それはいいけれど、美樹さんには伝えてあるのかしら」
まどか「さやかちゃんには伝えていません。さやかちゃん、こういう時に隠し事をするのが苦手ですから」
マミ(なんだかすごい既視感ある流れ…)
マミ「ちょ、ちょっとそれじゃあ確実性が足りないんじゃないかしら。他にも案を考えましょうか」
まどか「そ、そうですね」
三十分後
マミ(結局なにも思いつかなくて鹿目さんを帰してしまったわ)
マミ(…鹿目さんの言うとおり、暁美さんが最も自然体で接することが出来るのは佐倉さん)
マミ(そして、佐倉さんの方も、私のような過去の確執もないから暁美さんに一番気を置ける…確かに二人がくっつくのは案外いいのかもしれない)
マミ(なんにせよ、成立するかはともかくとして、とにかくいまは私の方で暁美さんと鹿目さんの頼みの整理をしないと…)
ピロン
マミ「今度は美樹さん?『相談したいことがあるんですけどいいですか?』…まさか」
さやか「まどかと杏子をくっつけたいんです」
マミ(またなの?)
マミ「えーっと、とりあえず理由を聞かせてもらえるかしら」
さやか「さすがマミさん、飲み込みが早くて助かるよ」
マミ(もう三人目だし…)
さやか「まどかは皆のことを好きになれる子で、ほむらのことも好きなんだろうけど、やっぱり何度も繰り返させた負い目をを感じてるんだろうね」
さやか「んで、ほむらもほむらで何度も死なせた負い目もある感じで。だから、あの子達は下手に付き合うとマズいことになりそうで」
マミ「それでなぜ佐倉さんと付き合うべきになるの?」
さやか「まどかは、ああ見えて劣等感が激しい子なんですよ。その一方で、誰かに適度に甘えたい部分もあるみたいで」
さやか「でも、ほむらはどうしてもまどかを甘やかしすぎちゃう癖があるし、あたしもまどかにはあまり強く出ることが出来ない」
さやか「その点、杏子ならしっかりと言うべきことは言ってくれるし、甘えさせるべきところは甘えさせてくれる」
さやか「それに、杏子も杏子でまどかを妹みたいに可愛がってて」
さやか「戦いだらけの日々の中で、あの子を心の癒しにしてるみたいなんですね」
マミ「美樹さんの言いたいことはなんとなくわかったわ」
さやか「それで、二人をくっつけるのに協力してくれますか?」
マミ「…ちなみにどうやってくっつけるつもり?」
さやか「バレンタインの日をキッカケにしようと思ってます!」
マミ(やっぱり!)
マミ「え、えーっと」
さやか「駄目、かな」ウルウル
マミ「ぐっ…がぁっ…」
マミ(涙目で訴えかけてくる美樹さん…普段とのギャップで破壊力が…!)
マミ「わ…わかった…わ」
マミ(断りきれない私のバカ!)
さやか「ありがとうございます!あ、ほむらには伝えないでね。あれに伝えるとたぶん怒り狂うから」
マミ「え、ええ…」
マミ(どうするのよ私!?)
マミ(確かに美樹さんの言うとおり佐倉さんと鹿目さんは割と末永く付き合っていけるタイプかもしれないけれど!)
マミ(このまま全員くっつけると『まどさや』『ほむ杏』『まど杏』で約二名修羅場確定じゃないの!)
マミ(しかもまたバレンタインて!どれだけチョコレートに甘い幻想抱いてるのよ!?)
マミ(…引き受けてしまったからには仕方ないわ。幸い美樹さんはまだ方法を思いついてないからどうにか調整して)
プルル
マミ「佐倉さんからメール…まさか」
杏子「ほむらとさやかをくっつけたいんだ」
マミ(勘弁して!)
杏子「あ…悪い、急に押しかけてきて迷惑だよな」
杏子「そうだよな。ほむら達がいるから一緒にいてくれるけど、本当はあたしなんかと二人きりなんて嫌だよな」
杏子「本当にごめんな。勝手に弟子入りして、勝手にいなくなって、勝手に戻ってきて、勝手に相談持ちかけて…」
マミ「そ、そんなことないわよ!?むしろ積極的に頼ってくれるようになって嬉しいわ!」
マミ(これは本当のことだから!)
杏子「いやでも、なんか脂汗かいてるように見えるし…」
マミ「嬉しいって言ってるでしょ!?これ以上ガタガタ抜かすなら撃ち殺すわよ!?」
杏子「お、おう…ありがと、マミ」
杏子「ん…とりあえず、さやかとほむらに付き合ってほしい理由から話すわ」
杏子「ほむらの奴さ、正直言って危なっかしいんだよ」
杏子「あいつ、皆のリスクを減らすためとか考えてるのか、危険ごとはなんだって自分で引き受けようとするから、簡単に傷ついていっちゃってさ」
杏子「何度もまどかやあたし達を殺しちまってた負い目からなんだろうが、自分の命を他に比べて軽く扱うんだよ」
杏子「勿論、あたしやあんたは何度か注意したさ。けど、その場では納得してる風なんだけど、あいつからしてみればそいつは『才能のある奴の理屈』なんだろうな」
杏子「いや、別にあたしやあんたが天才だって言ってるわけじゃないよ?努力を何倍もしてるからここまで生き残ってるんだと思う」
杏子「けど、武器すら作れないあいつからしてみれば、あたし達は充分『持ってる』奴なんだよ。そんな奴らからなに言われようが育つのは嫉妬や反骨心だけさ」
杏子「まどかはまどかで、ほむらの事情を知ってるせいで強く出れないから、応援することしか出来ない」
杏子「けど、さやかは違う。あいつは、たとえ同じ立場に立てなくても、ほむらが間違ってると思えばそう言えるし、止めるためなら殴ってでも止めようとしてやれる」
杏子「ほむらからしてみても、そんなさやかの言葉が一番心にくるんだろうな。だからあいつには素直に反発できるし喧嘩もできる」
杏子「本人は認めないだろうが、あいつらみたいに煽りあったり本音でぶつかれる関係ってのは貴重なんだよ」
マミ「…とにかく、美樹さんと暁美さんをくっつけるのに協力してほしいわけね」
杏子「話が早くて助かる」
マミ「どうやってキッカケを作るの?バレンタイン?」
マミ(どうせバレンタインでしょ)
杏子「ああ、そういやバレンタインがあったか。あの日ならチョコと一緒に渡させれば自然だもんな!」
杏子「誰がくっついても不思議じゃないうってつけの日だ。そこに気がつくなんて流石はマミだ!」
マミ(墓穴を掘った!)
杏子「あんたに相談してよかったよ、ありがとう。ああ、まどかには伝えないでくれよ。さやか絡みであいつが我慢できると思えないし」
マミ「え、ええ…」
マミ「えーっと、みんなの意見を纏めると…『まどさや』→『さやほむ』→『ほむ杏』→『まど杏』…」
マミ「とんでもないスクウェアができてしまったわ!!!」
マミ「そもそもなんでみんな普通に同性が付き合うことを容認してるのよ!?なんで私の名前が無いのよ!?」
マミ「しかもなんでバレンタイン被りが発生するのよ!?しかも結局美樹さんも佐倉さんも『出て行く私に便乗してあとは自然の成り行きに任せる』形に落ち着いちゃうのよ!?」
マミ「こんなものどう捌けと…」
マミ(負けちゃだめよ巴マミ…考え抜けばなにか掴めるはず)
巴マミは悩んだ。
受験以上に困難なこの任務を達成する為に。
魔女との戦いを片手間に、休憩時間は彼女達の四角形関係にあて、時には知人に相談し、時には見知らぬ人の意見を掲示板で取り入れ
そして、来るべきバレンタインの前日。
彼女は、苦悩の末に解答を得た。
マミ(流れに身を任せましょう)
時には諦め腹を括ることも大切だと。
その時の彼女は、とても晴れやかな微笑みを浮かべていた。
バレンタイン数日前
ほむら(巴マミに言ったとおり、くっつけるにしても本人たちが望んでいなければ意味が無い)
ほむら(だからといって、見守っているしかないのかしら。いいえ、手はある)
まどか(今はまだその気がないならこっちからその気にさせてあげればいい)
さやか(けど、まともな方法で二人を急接近させるのは難しい)
杏子(だから、こいつを使わせてもらうよ)
ほむら(かつて武器調達に行っていた時にヤ○ザの屋敷で手に入れた)
まどか(ママのお酒の棚に隠されてた)
さやか(仁美にボカして相談してたらそっと手渡された)
杏子(顔なじみのホームレスのおっちゃんと物々交換で貰えた)
ほむまどさや杏(精力増強用、『ラッコのエキス』を!!)
バレンタイン当日
ほむら「まどか、そこのヘラをとってくれる?」
まどか「これかな?」
さやか「コラ、杏子!マミさんの作ってくれたチョコをつまみ食いするなぁ!」
マミ「まだたくさんあるから少しくらいなら構わないわよ」
杏子「へへっ、んじゃお言葉に甘えて」アーン
さやか「踊り食いすなっ!」
マミ(端から見れば平和な光景なのに)
まどか「」ソワソワ
ほむら「」ソワソワ
さやか「」ソワソワ
杏子「」ソワソワ
マミ(皆の事情を知ってる私には地獄でしかないわ)
マミ(…とりあえず、私は私のチョコを作ることに専念しましょう。私は見てません。なーんにも見てません)
ほむら「」チラ
ほむら(みんなの意識が他に向いてるこの隙に)つラッコエキス
まどか「」チラ
まどか(わたしの作ったチョコにこれを)つラッコエキス
さやか「」チラ
さやか(二人分注入して)
杏子「」チラ
杏子(あとは標的に渡すだけ!)
マミ「うん、みんな出来たみたいね」
さやか「一人が人数分作ったからだいぶできたね」
杏子「一人五種類…へへっ、これで気兼ねなくいただけるぜ」
ほむら「あなたはもう結構な量をつまみ食いしてたでしょう」
まどか「ウェヒヒ…」
ほむら(ここまでは順調に来れた)
まどか(さあ、後は)
さやか(マミさんが席を立てば完璧!)
杏子(いけぇ、マミィ!)
マミ「……」
プルルル
マミ「はい」
ほむまどさや杏(―――――来たッ!!)
マミ「ごめんなさい、みんな!少し出かけるわ」
ほむまどさや杏「「「「じゃあ私もい」」」」
ほむまどさや杏((((……!!!?全員が被った!?))))
マミ「ちょっと受験のことで先生から話があって…少し時間がかかるかもしれないからみんなで続けておいて!」
ほむまどさや杏((((うっ…!))))
ほむら(まさかの受験関係…これは私との約束じゃない)
まどか(よりによってこのタイミングだなんて、ツイてなさすぎるよ)
さやか(どうしよう。これじゃあ、せっかくの特製チョコが…)
杏子(つっても、さっきなぜかみんなが被ったのもあって、マミがいなくなった瞬間チョコパを止めるのもなんか感じ悪いし)
ほむまどさや杏((((こうなったらやるしかない…私【あたし】ひとりで!!))))
杏子「…まあ、マミの奴は残念だったけどさ、あたしらはあたしらでマミのぶんまで楽しもーぜ」
さやか「そうだね。あたしらが沈んでちゃマミさんが気を遣っちゃうかもしれないし」
まどか「マミさんとお菓子作りならいつでも喜んで参加するしね!」
ほむら「まどかの言うとおりね。みんなで集まるなら私も参加したいと思うわ」
杏子(よし…ひとまずはチョコパーティを続けられたな)
ほむら「ねえ、どうせならみんなで同じものを順番に食べていかないかしら」
杏子「なんでだ?」
ほむら「せっかく作ったのだから、みんなの意見も聞きたいのよ。他の人のと比べたりね」
さやか「ほうほう、このさやかちゃんの舌で吟味してもらいたいとな」
ほむら「そうね。度量の狭いあなたに美味しいと言わせたら私も自信がつくかもしれないわね」
さやか「バカにするなーッ!あれ?いまのは褒められたのかバカにされたのかどっちなんだろ」
まどか「みんなで感想を言い合うのも面白そうだよね。私はほむらちゃんに賛成」
杏子「あたしもいいぜ」
さやか「あたしもいいよ」
ほむら(よし…これであの二人に渡す流れにもっていけたわね)
ほむら「じゃあまずは言いだしっぺの私のチョコシフォンケーキから」
まどか「わぁ、いただきます。…うん、ちょっと苦味もあるけど美味しいよ!」
さやか「ん~、このふわふわした食感…苦味さえなければ文句なしだよ」
杏子「苦いか?あたしは普通に甘く感じるし何も文句ないけど…チョコつまみすぎて些細な違いがわからなくなったかな」
ほむら(よし…二人は間違いなくエキスを堪能したみたいね)
まどか「じゃあ次はわたしのチョコタルト!」
さやか「ん~、激甘でうまっ!さすがあたしの嫁、料理も一品だ!」
ほむら「そうね。甘さの中のほんのりとした苦味もいいアクセントになってるわ。生地もサクサクしててイイわね」
杏子「散々甘いもの摘んだからちょうどいいな」
まどか(よし…二人は間違いなくエキスを堪能したみたいだね)
さやか「さてさて。次はさやかちゃん特性のガトーショコラでごぜーます」
ほむら「あら、意外に甘さと苦味のバランスが両立しててイケるわね。あなたも上条恭介にこのくらい器用に立ち回れば手に入れられたかもしれないのに」
さやか「流れるように毒を吐くな」
まどか「はむっ…わたしにはちょっと苦味が強いかも…」
杏子「おお、口に残ってた甘さが消えていく」
さやか(よし…二人は間違いなくエキスを堪能したみたいだね)
杏子「最後の分際で悪いけどさ、あたしは特に捻ってないよ。買ったチョコ溶かしてアーモンド詰めて終わりさ」
まどか「一周まわってなんか新鮮だね。うん、美味しい」
さやか「んん…?市販のチョコってこんな味だっけ。いや、美味しいけどさ」
ほむら「これが大人の味なのよ」
杏子(よし…二人は間違いなくエキスを堪能したみたいだな)
さやか(さて…)
杏子(あとは…)
ほむら(ラッコが効き始めるのを…)
まどか(待つだけ…)
―――――
学校
TDSに出てきた女子生徒A「巴さーん」フリフリ
マミ「ごめんなさいね、電話してもらっちゃって」
マミ(そう。先生からの呼び出しというのは嘘。本当は、あの場から抜け出す為にこの子たちに協力してもらったの)
TDSに出てきた女子生徒B「いいのいいの。この子が絶賛する巴さんのお菓子も気になってたし」
なぎさ「マミ!チョコが欲しいのです!」
マミ「はいはい。ちゃんとあなたのぶんも用意してあるから。はい、ハッピーバレンタイン」
なぎさ「わーい!」
女子A「これがウワサの巴さんのチョコケーキ…ん~美味っ」
女子B「巴さんのと比べると私達の見劣りしちゃうねー」
マミ「そんなことないわよ。二人ともとても筋がいいと思うわ」
なぎさ「ですがやはりマミのと比べると劣るのです。これからも練習に励むのです」
女子A「ははー、精進いたします」
マミ「こらっ」ピンッ
なぎさ「きゃんっ」
女子B「あはは、気にしなくていいよ巴さん」
女子B「…にしても、まさか巴さんと友チョコ交換できるとは思ってなかったわ」
マミ「え?」
女子A「あたしら巴さんとよく喋るほうだけどさ、なんというか、前はそれでもどこか壁を感じてたんだよね」
女子B「少し前までは、なんだか片意地張ってるみたいになんでも自分でやらなくちゃって感じでさ」
女子A「けど、最近は巴さんから私達に声かけてくれるようになったよね」
女子B「今回のことだって、私達に相談せず一人でなんでも解決しようとしてたと思うし、巴さん、だいぶ変わったよ」
マミ「そんなにかしら?」
女子A「前の凛としてかっこよかった巴さんも好きだったけど、私はいまの巴さんの方が好きかな」
女子B「私も。なんだか、ようやくあたしたちも巴さんの友達になれたって感じ」
マミ「二人とも…ふふっ、ありがとう」
なぎさ「なぎさは特にマミのことをカッコイイ奴だとは認識していなかったです」
マミ「なぎさちゃんは後でお話ね」
マミ「けど…そうね。私から変えたんじゃなくて、きっと彼女達が変えてくれたんだと思う」
女子A「それって、例の後輩ちゃんたち?」
マミ「ええ。みんな可愛い後輩で、大切で大好きな友達よ」
―――――ー
マミ宅
さやか「ふぅ…」パタパタ
さやか(なんだか身体がイヤにポカポカしてくる…それに…)
まどか「さやかちゃん暑いの?///」ハァハァ
さやか「う、うんちょっとね」ハァハァ
さやか(どう見てもまどかが…色っぽい)
杏子「だ、暖房効きすぎなんじゃねーの?」パタパタ
ほむら「そ、そうね。ちょっと見てくるわ」
パンッ
ほむら「ッ!」
杏子「おっと、パーカーのボタンが」ムッワァッ
ほむら(この修道女…スケベすぎる!)ゴクリ
ほむら「あっ…なんだか頭が…」クラッ
さやか「!」
まどか「ッ!」
杏子「!」
まどか「よ、横になって!胸元開けてあげるから!」
さやか「いや、全部だ。全部脱がせろッ!!」
さやか(な…なんなのこのやり場の無い高揚感は…)ハァハァ
杏子(ヤバイ…どうにか発散させねーと…!)ハァハァ
まどか「あ…もう駄目…わたし…」
まどか(かわ…いい…かわいい…!)
グイッ
さやか「あっ」
チュッ
さやか「!!」
まどか「んっ…はぷっ…」
さやか(まどかがあたしにキス…!?)
まどか(可愛すぎるよさやかちゃん!!)
チュル
さやか「ん…」
さやか(まどか…甘い…!)
ほむら「……」ボーッ
ほむら(ようやく…叶ったようね…私の夢…)
ほむら(けれど、嬉しい反面…どこか空虚なのはなぜ…?)
スッ
ほむら「?」
杏子「ま、まったく、あいつら急に盛りやがって。そんなに気持ちいいのかね、あれ」モジモジ
ほむら(杏子の指が絡んで…)
杏子「な、なあ…ほむらはどう思う?///」
ほむら(可愛い)
ほむら「…確かめて…みましょう…」
まどか「んむ…」
さやか(あたまが…ふっとうしそう…)
さやか「ん…」
チュッ
杏子「んむ…」
ほむら「はむ…」
ピチャピチャ
まどか「……」ボーッ
さやか「……」ボーッ
まどか「」コクリ
さやか「」コクリ
杏子「ぷはっ…へ、へへっ…凄いだらしない顔だ」
ほむら「きょう…こ…」
杏子(かわいい)
グイッ
杏子「?」
チュッ
杏子(―――――まどか!?)
まどか「うぇひひ…」
ほむら「ま、まどか…」
クイッ
ほむら「え」
さやか「あんたはこっちだよ…」
ハムッ
ほむら(――――!舌が…すごく絡んできて…)
杏子「むー!!」
まどか(いつもカッコイイ杏子ちゃんが顔を赤くして蕩けた顔で…)
まどか(すごくかわいい)
杏子(こ…この…調子に乗るなよ…!)
ガバッ
まどか「ひゃっ」
杏子「今度はあたしの番だからな!」
グイッ
まどか「んむっ!んんんん~~~~」
―――お姉ちゃん
杏子(チクショウ…まどかが可愛すぎてモモがよぎっちまう)ハァハァ
ほむら「…ぷはっ」
さやか「へ、へへ…あんたにもこんな顔ができたなんてね」
ほむら「……」ボーッ
ガバッ
さやか「うわっ」
チューッ
さやか(ちょ、いきなり激しい…!)
ほむら(あなたの味…もっと…!)
杏子「ぷはっ…」
まどか「はぁ、はぁ…」
さやか「……」ポーッ
ほむら「んむ…」
まどか「……」
ほむら「……」
さやか「……」
杏子「……」
ピチャピチャ
まどか(ほむらちゃん!ほむらちゃん!)
ほむら(まどか!まどか!)
さやか(杏子ォ!)
杏子(さやかぁ!)
まどか(ほむらちゃんとさやかちゃんと杏子ちゃんの)
ほむら(まどかと杏子とさやかの)
さやか(杏子とまどかとほむらの)
杏子(さやかとほむらとまどかの)
ほむまどさや杏((((みんなの味が混ざり合って、もう誰が誰のかわからない…///))))
ドサッ
まどか「」ハァハァ
ほむら「」ハァハァ
さやか「」ハァハァ
杏子「」ハァハァ
ほむまどさや杏「「「「お粗末…!!」」」」
―――――
数時間後
マミ(流石にそろそろ展開が変わったはずよね)
マミ「ただいま…」
ワイワイ
杏子「イチゴをここに沿えればらしくなるんじゃないか?」
ほむら「なるほど…」
さやか「あっ、おかえりマミさん!」
まどか「受験のことは大丈夫でしたか?」
マミ(よかった。なんらかの形で決着は着いたのね)ホッ
マミ「ええ。もうなにも恐くないわ」
杏子「さすがにチョコばっかじゃ胸焼けすると思ってショートケーキにしたんだ」
マミ「わぁ…この黄色い髪の砂糖人形、私をイメージしたのね」
ほむら「私が彩色しました」ヌッ
マミ「うふふ、ありがとう暁美さん」
まどか「さあ、どうぞマミさん。これが私達の気持ちです!」
マミ「ありがとう…ありがとう、みんな。はむっ…美味しい…少し苦味があるのはそういうハーブでも入れたのかしら?」
ほむまどさや杏「「「「」」」」ニヤリ
マミ(…あら?なんだか身体がぽかぽかして…)
杏子「マミ…これからが、あたしたちからあんたへのバレンタインだ」
マミ「え…?」
――――――
翌日
女子A「おはよー巴さん」
マミ「おほよう」ツヤツヤ
女子B「あれっ、なんか肌ツヤ良くなってない?なんか良いことあった?」
マミ「うふふ。昨日のバレンタインで、改めてあの子達と仲良くなれた気がして…」
ドドドド
さやか「マミさーん!!」バッ
女子A「!?」
マミ「っと」
ダキッ
マミ「もう。いきなり飛びついたら危ないでしょ」
さやか「えへへ、マミさんなら受け止めてくれるって信じてましたから」
マミ「まったくもう」
まどか「マーミさんっ」ギュッ
マミ「きゃっ、鹿目さんまで?」
まどか「えへへ、さっきまではさやかちゃんとくっついてきたけど飛び出して行っちゃったから」
ザッ
ほむら「……」ソワソワ
杏子「……」ソワソワ
マミ「あら、二人とも」
ギュッ
マミ「おはよう」ニコッ
ほむら「……!」
杏子「お、おう、おはよう」モジモジ
まどか「ほーむらちゃん、おはよっ!」ガバッ
ほむら「お、おはよう、まどか」
マミ「ふふふっ」ニコニコ
女子A(仲良くなったって..)
女子B(どういう意味で!?)
ほむら(あの日を境に、まどさやどころか括りそのものがなにもかもなくなった)
ほむら(けれど、この関係も永遠に続くわけじゃない。きっといつかは、みんなそれぞれの道を選んで分かれていく)
ほむら(でも、それでも、いまこの時だけはこんな関係でいたい)
ほむら(だって…やっぱり私は、みんなのことが好きだから)
・
・
・
・
結界遮断フィールド内
QB「……」
ほむら「」スースー
QB「ずいぶんと暢気な寝顔だね、暁美ほむら」
QB「…きみは、かつて鹿目まどかという少女の為だけに戦ってきたと言っていたね」
QB「そんなきみが、『鹿目まどか』以外の人間も結界の中に招き入れてしまったのはなぜなんだろうね」
QB「…たしか、きみの語った『魔女』の結界は、当人が望んだ形に近いものになるんだったよね」
QB「もし、きみがいま夢を見ているとしたら、それこそがきみの望んだカタチなのかもしれないね」
終わり
終わりです。百合って難しい
引用元: https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1550158767/